生前の対策として、遺言書や家族信託があります。
どちらも死後の財産の行き先を指定できるという点では同じですが性質が異なります。
遺言書:被相続人が財産の分配方法や想いを書面に残すこと
家族信託:財産を信頼できる人・会社に託して、託した目的に従って管理してもらうこと
このページの目次
遺言書か家族信託どちらを選択するかの判断の目役
遺言書か家族信託どちらを選択するかは
- 二次相続時の財産の承継先の指定をしたいか
- 生前に財産管理をまかせたいか
- 家族に財産の承継先を知られてもよいか
が目安になります。
二次相続時の財産の承継先の指定
自身の死後、さらにその後の相続(二次相続)の遺産の行き先を決められるのは家族信託のみです。家族信託には「受益者連続信託」という機能があり、例えば「〇〇不動産は妻に渡す。その後妻が亡くなったあとは長男に渡す」といったことが、家族信託であれば指定できます。
先祖代々引き継いできた土地などを承継されたい時に利用されます。
生前の財産管理をまかせたいか
遺言書は相続開始後のみに効力を有しますが、家族信託は自信が認知症によって財産の処分ができなくなっても、受託者であるものが処分することができます。
よく、認知症を発症し、施設入居費用の為にご自宅の売却を検討されているが売却は可能かというご相談を頂きます。その場合、不動産売却の為には成年後見人制度を利用し、家庭裁判所の許可を得てからでないと売却はできません。
その点、家族信託であれば受託者の判断で売却することが可能です。
家族に財産の承継先を知られてもよいか
家族信託の場合、不動産があれば信託の内容が登記されます。
登記事項証明書は誰でも見られるものなので、家族知人に知られてしまう可能性があります。
子供間の仲がよくない、家族には承継せず寄付をしたい等、知られたくない事情がある場合は遺言の方が好ましいと考えられます。
また費用面でも家族信託のほうがかさみます。
費用をかけずに、財産の承継先を指定されたい場合は遺言書を残されるほうがよいでしょう。
家族信託と遺言の併用
家族信託と遺言を併用することも可能です。
上記に記載した違いを考慮したうえで、特定の財産については遺言書で、特定の財産については家族信託でと決めることも出来ます。
家族信託と遺言書を併用する際の注意点
家族信託と遺言に同じ財産について記載されている場合はどちらが優先されるか
原則、生前に財産の承継先を決める場合、最後に意思表示したものが優先されます。
しかし性質上、家族信託は、遺言書よりも優先さることとなります。
例1)遺言書作成後、家族信託契約が締結された場合
- 遺言書を作成した。A不動産を長男にと記載がある。
- 家族信託契約を締結した。A不動産を次男にと記載がある。
上記のように同じ不動産の承継先が異なる内容になっている場合、後に締結された家族信託の契約書に書かれている内容が優先され、不動産は次男が承継することになります。
例2)家族信託契約締結後、遺言書を作成していた場合
- 家族信託契約を締結した。A不動産を次男にと記載がある。
- 遺言書を作成した。A不動産を長男にと記載がある。
原則どおりに考えると、最後に意思表示したものが優先されるので後から遺言書を書く場合は遺言書が優先されると思われるかもしれません。
しかし、家族信託契約で生前対策をする財産は本人の財産ではなくなります。
そのため家族信託契約内に含まれる財産(=信託財産)が後から書かれた遺言書にも記載されていた場合には家族信託の内容が優先されます。
よって不動産は次男が承継することになります。
まとめ
遺言・家族信託にはそれぞれにメリット・デメリットがあります。
どちらにすべきか悩まれた際にはご相談下さい。