遺言書を作成する際には、遺言執行者を指定するかどうかの検討が必要です。
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遺言執行者とは
遺言執行者とは、遺言者の指定または家庭裁判所によって選任され、被相続人の死後に遺言書の内容を実現する手続きをする人のことをいいます。
あまり聞きなれない言葉だと思いますが、遺言書で遺言執行者を指定することで煩雑な相続手続きがスムーズに進めることができ、相続人の負担を減らすことが出来ます。
遺言執行者の指定が必須な場面
遺言を作成する際に、必ずしも遺言執行者を指定しなければならないわけではありません。
しかし、遺言書に以下のような遺言事項が含む時には、遺言執行者の指定が必要となります。
遺言認知
遺言で、婚姻関係にない男女間に生まれた子どもに、法律上の親子関係を生じさせる手続きのことをいいます。認知は、生前に行うのが一般的ですが、遺言によって認知することも可能です。
推定相続人の廃除・廃除の取消
相続人から虐待を受けていたなどの理由によって、遺言でその相続人を推定相続人から除外する手続きのことをいいます。
認知と同様に相続人の廃除は、遺言者の生前に行うこともできますが、遺言によって相続人の廃除を行うことも可能です。
この2つの遺言事項は、相続人では行うことができません。
遺言書で遺言執行者を指定するか、されていないときには、家庭裁判所に申立てをして遺言執行者を選任してもらわなければなりません。
遺言執行者の行う手続き
遺言執行者は以下のような手続きを行います。
① 就任通知書の作成・交付
前提として、遺言書で指定された人が、必ず遺言執行者に就任しなければいけないわけではありません。指定された方がご自分の意思で判断することができます。
遺言執行者に就任すると判断したときは、遺言執行者に就任した事実や遺言の内容を相続人に知らせるために、就任通知書を作成し、相続人全員に送付します。
② 相続人の調査
遺言執行者は、被相続人の戸籍を取得するなどして、誰が相続人になるのかを確定させます。
相続人調査の完了時には、相続人の範囲を明らかにするために、法定相続情報一覧図や相続関係説明図などを作成する。
③ 相続財産の調査
被相続人の相続財産の調査を行い、相続人に対して財産目録を送付しなければなりません。
たとえば、各金融機関に照会をし、預貯金の有無とその額を明らかにし、不動産があるかどうか、また相続財産には、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も含むことになるため、遺言執行者が被相続人の信用情報の開示請求をするなどして、借金の有無も調査する必要があります。
④ 財産目録の作成・交付
相続財産の調査が終わったら、その内容を財産目録にまとめ、作成した財産目録は、相続人全員に送付します。
⑤ 遺言の内容を実行
上記の作業が終了した後は、遺言の内容を具体化する手続きに移ります。
預貯金などの払戻手続き、不動産の所有権移転登記手続きなど
⑥ 任務完了後に相続人に報告
遺言内容の実現がすべて完了すると、遺言執行者は、相続人全員に対して任務完了の報告を行い職務は終了となります。
遺言執行者を選任するメリット
前述したとおり、上記の遺言執行者の指定が必要な場面以外では遺言執行者の選任は必須ではありませんが、相続手続きはとても煩雑遺言執行者を選任するメリットがあります。
① 不動産の相続登記(所有権移転登記)がスムーズにできる
不動産について遺言で、「特定の不動産」を「特定の相続人」に相続させるといった記載がある場合、指定された不動産の所有権が相続開始時から指定された相続人に移転しており、相続人単独で登記できることから、遺言執行者は登記義務を負わないとされていました。
しかし、改正民法により、遺言執行者は相続人が第三者対抗要件を具備するために相続登記を申請できることが明記されました。
② 預貯金の払戻手続きが簡略化できる
被相続人の預貯金口座を解約するときには、遺言書で被相続人の預貯金を取得する相続人が定められていたとしても、金融機関によっては相続人全員の印鑑証明書を要求されることがあります。
しかし、遺言執行者が指定されていれば、遺言執行者だけで預貯金の払戻手続きを進めることができ、迅速に払い戻しが可能となります。
遺言執行者の選任方法
遺言執行者を選任する方法には、遺言書で指定する方法と、家庭裁判所に申立てを行い選任してもらう方法の2つがあります。
(1) 遺言書による指定
遺言者は、遺言書以外で遺言執行者を指定することはできません。
もっとも、遺言書では遺言執行者を直接指定できるだけでなく、遺言執行者の指定を信頼できる第三者に委託することもできます(民法1006条1項)。
(2) 相続開始後、家庭裁判所への選任申立て
遺言によって遺言執行者が指定されていなかった場合や、指定されていた人が就任を拒否した場合などには、相続人や利害関係人などの家庭裁判所への申立てにより、遺言執行者が選任されます。
ただし、家庭裁判所によって遺言執行者が選任されるためには、「遺言の執行が必要である」という要件が必要になります。遺言の内容が遺言執行を必要としなければ、申立てがあったとしても却下されてしまいます。
遺言執行者には誰を指定するべきか
遺言作成時に遺言執行者を指定する場合、未成年者および破産者以外であれば、特別な資格を要せずに誰でもなることができます。相続人や受遺者と同一人物であっても遺言執行者になることは可能です。
しかし、遺言執行をスムーズに行うためには、相続に関する知識や経験が必要になります。
そのため遺言執行者は、司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
ご相談頂ければ、遺言書の作成からサポートすることができ、将来争いにならない有効な遺言書の作成が可能になります。是非ご相談下さい。