遺言書や生前対策は、財産や権利を円滑に次世代へ引き継ぐために非常に重要な役割を果たします。
高齢化が進む中、相続に関するトラブルが増えており、「争続」と呼ばれる相続争いが発生するケースも少なくありません。
しかし、遺言書を作成し、生前から対策を講じておくことで、トラブルを未然に防ぎ、ご自身の意思をしっかりと反映させることが可能です。
本ページでは、遺言書の種類や作成方法、生前対策としてできる具体的な方法について解説いたします。
このページの目次
遺言書作成のメリット
遺言書は、亡くなった後にご自身の財産をどのように次世代に承継したいか、ご自身の想いを伝える手紙です。
遺言書を作成することで、以下のメリットを得られます。
1. 財産分配の意思を明確に示す
遺言書があることで、誰にどの財産をどのように相続させるかを明確に示すことができます。家族に争いが生じにくくなり、ご自身の意思を正確に反映することが可能です。
2. 家族間のトラブルを防ぐ
遺言書を作成し、分配方法があらかじめ決められていれば、遺産分割協議が不要になり、家族間のトラブルを防ぐことができます。
3. 配偶者や子供への特別な配慮ができる
法定相続ではなく、特定の家族に多くの財産を相続させたり、逆に特定の相続人にあまり相続させたくない場合に、遺言書を通じて自分の意思を示すことができます。
遺言書の種類と特徴
遺言書には主に以下の3種類があり、それぞれ作成方法や特徴が異なります。
1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者が自らの手で全文を記載する遺言書です。
特徴
手軽に作成できるため、費用がかからない点がメリットです。
注意点
全文を自書しなければならないことや、記載内容に不備があると無効になる可能性がある点に注意が必要です。また、紛失や改ざんのリスクもありますが、法務局での保管制度を利用することで、安心して保管できるようになりました。
2. 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で公証人の立会いのもと作成する遺言書です。
特徴
公証人が関与するため法的に有効性が高く、不備や紛失のリスクが低いのがメリットです。
注意点
公証役場に出向くため手続きに費用と時間がかかりますが、確実な遺言を残す方法として選ばれることが多いです。
3. 秘密証書遺言
秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしつつ、公証役場で証人による確認を受けて保管する遺言書です。
特徴
内容を秘密にできるため、内容を誰にも知られたくない場合に適しています。
注意点
自筆証書遺言と同様に内容の不備があると無効になる可能性があります。
遺言書以外の生前対策
生前対策とは、将来の相続に備えて、相続財産の整理や税金対策、権利の引き継ぎなどを計画的に進めることです。主な生前対策には以下のような方法があります。
1. 生前贈与
生前に財産を贈与することで、相続税の軽減を図ることができます。
贈与税の非課税枠を利用する 年間110万円以下の贈与には贈与税がかからないため、この範囲内で定期的に財産を分けることで、相続税の節税対策となります。
相続税の110万円以外の非課税枠の他に、住宅取得資金の贈与や教育資金、結婚・子育て資金の非課税制度など、特定の目的に限り贈与税が非課税となる制度もあります。
2. 家族信託
家族信託とは、自分の財産を家族(受託者)に信託し、管理・運用を任せることで、将来の財産管理や相続をスムーズにする方法です。
一番のメリットは認知症対策になることです。
万が一認知症が発生し、判断能力が低下した場合でも、信託した財産は信頼できる家族が管理を続けるため、財産の凍結を防ぐことができます。
柔軟な財産分配が可能 受益者の指定や分配方法などを自分の希望に沿って設定できるため、法定相続よりも柔軟な財産管理が実現します。
3. 任意後見契約
任意後見契約は、認知症が発症する前のお元気なうちに、事前に信頼できる人(任意後見人)を選任して契約を結び、財産管理や生活支援を依頼する制度です。
認知症が発症した後に成年後見制度を利用する場合は、後見人の選任申立てはできるものの、決定は裁判所が行う為、必ずその人が後見人になれるわけではありません。
認知症などで判断力が低下した際に、信頼できる人に財産や生活面での支援を依頼することができます。また任意後見契約を結んでおくことで、将来の財産管理に備えることができ、トラブルを防ぐ手段として活用されています。
専門家に依頼するメリット
遺言書の作成や生前対策は、法的な知識が必要であり、内容に不備があると無効になる場合もあります。専門家に相談することで、以下のようなメリットが得られます。
1. 正確な法的サポート
司法書士や弁護士が関わることで、遺言書が法的に有効な内容となり、不備がないか確認できます。特に相続トラブルが予想される場合には、専門家のアドバイスが役立ちます
2. 節税対策のアドバイス
生前贈与や相続税対策について、適切な節税方法をアドバイスしてもらうことで、税負担を軽減し、スムーズに財産を引き継ぐことが可能です。
3. 将来の安心
任意後見契約や家族信託など、将来の判断能力が低下した際にも適切なサポートを得られるため、安心して生活することができます。
まとめ
遺言書作成・生前対策で円滑な相続を
遺言書や生前対策を行うことは、円滑な財産承継や将来のトラブル防止に大きく貢献します。また、相続税の負担を軽減するための対策を講じることも、相続人にとってのメリットとなります。
当事務所では、遺言書の作成から家族信託の活用、任意後見契約まで、幅広い生前対策に関するご相談を受け付けております。お気軽にご相談いただければ、専門家として丁寧にサポートさせていただきます。